私は今回のテロ事件でアメリカが言っている“報復[retaliation]”という言葉に二つの意味を考えるべきかと思っています。一つは仕返し、つまり不当な行為に対して同等の行為で報いるという通常の意味です。人間世界が聖人君主の集団でもないかぎり、許容限度というものがあり、今回のような見境のない行為に対して仕返しを考えるのは万国共通の人情というものではないかと思います。第二は、テロ行為の組織性からして、また凶悪な殺人行為であることから、その根元を断って将来の犯罪を防止しようとするのは、処罰を前提とする以上は報復という意味合いを持った警察行為であろうと思います。
報復対象が国外の国家的組織なら、これに対する報復は明らかに戦闘行為がともなう戦争です。もし相手が国家的組織でないか、あるいは世界から国家として認められていない場合には、報復は定義としての“戦争”にはなりえません。あえて言うなら、アメリカ大統領が宣言しているような“新たな形の戦争”です。世界の警察を自任するアメリカが警察を名乗れないため、このような呼び方をせざるをえないのかもしれません。
国連は証拠提出を条件にアメリカの軍事行動を支持すると言っていますし、NATOは同じ条件で軍事行動を支援すると言っています。タリバン政権と国交を断絶したサウジアラビアもアメリカに証拠提示を求めています。そうして、全世界が、今回のイスラム過激派による蛮行を世界平和の維持にとって危険であると認識しています。
平和を希求する国々にとって、緊急かつ最重要な問題は、世界のいずれの国においてであれ、今回のテロ事件のような惨劇を未然に防ぐための対応をすることではないでしょうか。「戦争のために備えることは、平和を維持するための最も効果的な手段である」(ワシントン)という言葉もありますが、これは人類の歴史が証拠立てていて、残念ながら現代においてもこれが正当化されなければならないのは、今回のアメリカでのテロ事件が示しているように思えてなりません。(一日本人 2001年10月1日)
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