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「虚像」と戦うアメリカ |
9月15日の夜、アリゾナ州で一つの殺人事件が起こった。あるアメリカ人がインド系住民を射殺したというものである。
普通にこれだけを聞くと、日頃と変わらないアメリカによくある銃をつかった犯罪のようにしか思えないが、この殺人には裏がある。この男は、この15日の日中にレバノン系住民が経営するガソリンスタンドでも銃を反射、その後、アフガン系住民宅でも銃を発射した。その時、容疑者の男は「アメリカを断固支持する!」と大きい声で叫んでいたらしい。
なぜ昼間に銃を発射して夜には男の身柄が釈放されているのは甚だ疑問だが、その夜に男はガソリンスタンドにてインド系の住民を射殺した。被害者はその時、大きなターバンと大きな髭をたくわえていたらしい。
つまりこの殺人はヘイトクライムである。今回のテロがイスラム原理主義者によって引き起こされたものだという報道を受け、憎悪感が増幅したらしい。ようするにイスラム系住民なら誰でもよかったのである。
しかし、被害者はインド系住民。イスラム教とは無縁であった。ただターバンを巻いて髭を伸ばしていただけでその姿形はインド系住民によくあるものであったそうだ。容疑者の男はつまり、勘違いしたのである。
イスラム系住民なら誰でもいい。誰でも悪なのだ。そういった考え方が今回の犯罪の裏には隠されているようにおもえる。毎日のようにテロについての報道がされ、頭にターバンを巻き、髭をたくわえたオサマビンラディンが悪の親玉として伝えられている。そうしてそれらを見たアメリカ人達がターバン=イスラム系、髭=イスラム系と勘違いをし、ヘイトクライムを繰り返している。
アメリカは今、見えない敵とたたかっている。見えない敵にむかって憎悪感を強めている。まだあくまでオサマビンラディン氏の犯行と決まったわけではない。イスラム原理主義者の犯行と決まったわけではない。しかし、蔓延するヘイトクライム。イスラム系住民は身を守るのためにスカーフやターバンを巻かないでいる人達もいる。なにが、アメリカ人達をヘイトクライムへと駆り立てるのだろう?
今回の被害者であるインド系住民の方も、イスラム教徒でもないし、たとえイスラム教徒だとしてもイコール悪ではない。まったくもって今回世界貿易センターで犠牲になった「無実の人達」と同じ「無実の人」なのである。
今、アメリカは虚像と戦っている。見えない敵におびえ、犯罪を繰り返す人、見えない敵を認識して、知的に行動する人。混乱している時こそ、もう少し冷静に考えて欲しい。善悪を。(9月17日2001年)
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